コラム

Vol.69

by ひきたよしあき 2021.03.15

チャットのコトダマ

リモート授業をいくつか担当しています。

シニア層から小学生まで、
対象は幅広いのですが、この一年で
一番変化を感じるのは、小学生を
対象とした授業です。

昨年6月。教室での授業からリモート授業に
切り替えた頃は、子どもたちも私も、
モニターを挟んで困った顔をしていました。

お互い不慣れなもので、
どこにカメラがあるのかわからない。
モニターを揺らしたり、
画面から消える子が続出しました。

リアルな授業と同じように進めれば
すぐにあくびがでる。
じっと画面を眺めているだけなので、
飽きる気持ちもわかります。

あちこちの授業をこなしていると、
リモートに詳しい先生たちからコツを
教えてもらえたりもします。

一人の先生は、

「手話を取り入れるといいですよ。
拍手は、顔の近くで両手をひらひら
させるのですが、これだけの動きを
授業に取り入れるだけで、生徒が積極的に
参加してくれます」

と教えてくれました。
やってみると、効果は抜群。
授業の中で、「面白い!」と思ったところで
手をひらひらさせてくれる子どもが
でてきました。

また、ある授業では、

「一人で話していると、生徒の反応が
見られません。モデレーターを入れて、

『今の先生の話、わかったかな?』

『誰が説明してくれる人、いるかな?』

と進行させましょう」

と言われました。
一人ではなく、モデレーターと
会話をしながら授業を進める。
その会話の中に、自然と子どもが
入ってくれるような空気を作りだす。

こうすると、子どもたちの関与度が
ぐんと高まりました。

多くの子どもがリモート授業に慣れてくると
チャットで質問する子が増えてきました。
質問だけでなく、

「なるほど!」
「やりたくなった!」

みたいな短い感想が入る。
中には、

「今のギャグ、すべった」
「先生、まんざいみたい!」

なんてコメントも流れてくる。

これを見て、ある先生が、

「教室では発言できない子も、
チャットなら積極的に書き込んでくれます」

と話してくれました。
恥ずかしがり屋も気むづかしい子も
かっこをつけている子どもも、
自分の思いを書き込んでくる。

画面上に「チャットのコトダマ」が
滝のように流れていくのです。

「わからない」「むずかしい」
「つまらない」・・・

なんて言葉が続くと、こちらも
授業を軌道修正します。

「ええ?もう終わり?」
「もっとやって!」

という言葉に胸が熱くなります。

授業が終わるとき、モニター上の
子どもたちが笑顔で手をひらひら
させてくれる。

リアルでは味わえない達成感が
リモート授業にはあるのです。

新型コロナウィルスによる
不自由な生活がはじまって約1年。
その中で、多くの先生方が授業を工夫し、
子どもたちもそれに応えている。

都会の子も地方の子も海外で暮らす子も
いっしょに学べるリモート授業。
この可能性を最大限に引き出すために、
多くの先生方にアドバイスを頂きながら、
努力を重ねていこうと思っています。

  • ひきたよしあき プロフィール

    コラムニスト。
    明治大学で教鞭をとるかたわら、朝日小学生新聞にコラムを連載、読者である子どもたちとの文通も行っている。
    著書に、「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)、「5日間で言葉が『思いつかない』『まとまらない』『伝わらない』がなくなる本」(大和出版)等。