コラム

Vol.50

by ひきたよしあき 2020.04.06

半分のコトダマ

定年退職が近づいて、会社を休む日が
増えました。
これまで取れなかった夏休みや有給休暇を
一気に消化しています。

コロナウィルスの影響で、テレワークが
増えました。
各人が自宅にいる姿を動画でつないで
会議をする。とまどいと驚きを感じつつ、
充実感もあった。

「もうこの働き方が主流になる」

と確信しました。

会社半分・自宅半分。
仕事半分・プライベート半分。

そんな生活が、突然始まりました。

そんな折、会社を辞めた同期に再会。
近況を尋ねたら、

「日本とタイで仕事をしていてね。
その仕事の関係で、宮崎県にも
往来している。
日本と海外が半分ずつ。
都会と田舎が半分々々かな」

と、また「半分」の話。

そういえば、私の若い頃に比べると、
色々なところで「半分生活」が
始まっています。

ボランティアなどで、人のために
半分。
学び直しをしたり、サロンや
コミュニティに参加して、
自分のために半分。

勤めている会社の仕事を半分。
副業でまた半分。

実生活での友だちが半分。
ネットでつながった仲間が半分。

かつてのような会社に滅私奉公
することもない。
家事も育児も夫婦で半分ずつ
受け持つのが円満の秘訣。

ネットに流れる情報だって、
「話半分」と思ってないと、
デマに振り回されることもある。

男女の関係も、べったり依存
するよりは、自立と依存が半分ずつ
の方が長続きするように思います。

私は、この「半分生活」を支持します。

関西に生まれ、関東で長く暮らしている
私の中には、ふたつの文化が半分ずつ
入っています。

会社で働きながら、子どもに向けての
本を書き、授業を何年も続けてきました。
「サラリーマン」と「先生」が、
半分ずつ混じって、「私の仕事」に
なっています。

デジタルテクノロジーがさらに
進化すれば、一人の人間が、時間や
場所にとらわれずパラレルに活躍
できるようになる。

世間半分、自分半分で過ごしている
人たちが、気持ちのいい距離感を
保ちながら暮らしてゆく。

そんな世の中が出現する機運を、
コロナウィルス騒動の中で感じています。

「半分のコトダマ」は、きっと
私たちに、

「みんな、バランスのいい生き方を
しよう!」

と言っているに違いありません。

季節は、春。
新しい暮らしが始まるとき。
ぜひ、「半分のコトダマ」の声に
耳を傾けてみてください。

きっと上機嫌になれますよ。

  • ひきたよしあき プロフィール

    コラムニスト。
    明治大学で教鞭をとるかたわら、朝日小学生新聞にコラムを連載、読者である子どもたちとの文通も行っている。
    著書に、「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)、「5日間で言葉が『思いつかない』『まとまらない』『伝わらない』がなくなる本」(大和出版)等。