コラム

Vol.46

by ひきたよしあき 2020.02.10

友だちのコトダマ

小学3年生の頃から文通している女の子。
今は悩み多き中学1年生です。

先日送られてきた手紙に、

「ひきた先生、質問があります。
友だちって何ですか」

という一文がありました。

悩んでいるに違いありません。
しかし、この文章だけ追伸のかたちで
書かれていたので、悩みの中味までは
わかりませんでした。

仕方ないので、シンプルに
「友だち」について考えてみました。

友だちとは、腹を割って話せる人。
友だちとは、毎日いっしょに帰る人。
友だちとは、苦言を呈することのできる人。
友だちとは、休日も一緒に遊ぶ人。
友だちとは、相手のためにひと肌脱げる人。
友だちとは、どうでもいいことで笑える人。
友だちとは、明日も会いたいと思う人。

といろいろ考えてみたのですが、
帯に短し、襷に長し。
うまく言い当てられません。

中1女子にとっての「友だち」を
定年退職間際のおじさんが考えたところで
無理な話なのかもしれません。
なかなか手紙を返すことができず、
一週間、二週間と時間が過ぎていきました。

そんな折、ふと高校時代の友人から
メールがきました。
たわいもない用事でしたが、その返事を
書くとき、仲の良かったY君のことを
思い出したのです。

Y君は、大学2年のときにバイク事故に
より記憶を失い、それを苦に自殺しました。

ケンカ別れをしたまま死んでいったY君。
もう仲直りすることができません。
強いショックを受けた私は、しばらく
クヨクヨしていました。

高校、大学と同じだったこともあります。
至るところにY君の面影があります。

キャンパスを歩いていても、
近所の居酒屋にいってもY君のことを
思い出す。まだ死んでいないような気がするのです。

その夏、大学の仲間と榛名山にキャンプに
行きました。
早起きして、榛名富士を背景に昇る太陽を
観ました。刻一刻と赤味を帯びる榛名湖の水面。
それを見たとき、どこからともなく

「Y君にも見せたかった!」

という思いが湧き出てきたのです。
それは自分が驚くほど強く、切実な感情でした。

これを思い出したところで、私は筆をとり、
中1の女の子に「友だちのコトダマ」について
書きました。

「あの人といっしょに、この美しい風景を
眺めたい!そう思える人が、友だちだよ」

いつの日か、彼女にも榛名山の朝日を
眺めてもらいたいものです。

  • ひきたよしあき プロフィール

    コラムニスト。
    明治大学で教鞭をとるかたわら、朝日小学生新聞にコラムを連載、読者である子どもたちとの文通も行っている。
    著書に、「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)、「5日間で言葉が『思いつかない』『まとまらない』『伝わらない』がなくなる本」(大和出版)等。