博報賞

活動タイトル

原籍校復帰を支える児童思春期精神科医療と一体化した支援システムとその展開

出雲市立河南中学校 若松分校・出雲市立神戸川小学校 分校

特別支援教育部門|-| キーワード:島根県
出雲市立河南中学校 若松分校・出雲市立神戸川小学校 分校

活動内容

本校は、1973年に出雲市立湖陵小学校の分学級として県立湖陵病院(2008年2月より県立こころの医療センター)内に開設されて以来35年にわたり、様々な理由で学校に行くことができなかったり、特別な支援を必要としたりする児童生徒の支援を行ってきた。
 児童生徒の入院は年間を通じて随時あるが、突然の入院となるケースが多いため、課題を十分に把握できないまま教育活動をスタートせざるを得ない状況もしばしばである。そのような中で、児童生徒の教育的ニーズを迅速に把握し適切な対応を行うために、様々な連携のシステムを工夫してきた。そのひとつが「情報リレーシステム」である。これは、連絡ノートを使い、学校と病棟がそれぞれの時間帯での子どもの様子や配慮点について申し送りをするシステムである。分校では職員朝礼で、各担任が病棟からの申し送りを伝え、全職員が全児童生徒の状況を把握して1日の指導に当たるようにしている。この他にも、早期情報収集、原籍校復帰支援、医療合同研修等のシステムがある。これらのシステムを生み出す過程においては、常に医療と学校が同じ土俵に立ち、「子どものために何をすべきか」を納得いくまで話し合う姿勢を大切にしてきた。そして、医療と教育の「子どもの幸せ」という共通の願いが現在の連携支援のシステムを生み出してきたと言える。
 また、様々な課題を抱える児童生徒の支援を進めるためには、家庭、学校、地域の子どもたちに対する正しい理解と連携が欠かせないと考え、「医療と連携した教育の必要性」「精神障害や発達障害への正しい理解」について啓発に取り組んできた。その取り組みのひとつが分校見学会(年4回開催)である。過去10年間におよそ1,500名が参加し、近年は島根・鳥取はもちろんのこと、広島など山陽地域からの来校者もみられる。このような取り組みを通じて、これまでに約1,300人の児童生徒の原籍校復帰の支援を実現してきた。

【写真】
子どもたちの達成感を自信につなぐ行事の一つ「若松キャンプ」



審査委員より

児童思春期精神科医療と一体化した病院併設小・中学校として、様々な理由で学校に行けない児童生徒に対して、長期にわたる地道な実践を続けてきた。原籍校復帰という共通の目標の下に、医療機関と教育機関が緊密に連携し、切れ目のない情報リレーシステムを作り上げるなど、医療と教育の協力のあり方を示した貴重な実践である。

プロフィール

【創立】
1973年

【団体の規模】
・児童・生徒数:小学生5名、中学生15名
・クラス数:小学校1、中学校2
・指導者数:小学校1名、中学校7名