博報賞

活動タイトル

邦楽教育を通して日本の美や文化を理解する心を育む実践と指導法の研究

塚越 佐智子

日本文化・ふるさと共創教育部門|-| キーワード:東京都
塚越 佐智子

活動内容

「洋楽一辺倒な日本の音楽教育」で育った自分が、大人になって初めて邦楽と出会った時の感動と衝撃。ここを出発点に「自国の音楽の美しさを知り、楽しめる子どもたちを育てたい」という強い思いで、1986年から公立小学校で邦楽教育の実践をしている。
①通常の音楽科授業に邦楽の時間を確保し、全ての子どもに「箏」を中心とする和楽器に親しむ。
②技術面ではなく、邦楽の良さ・美しさ、を感じる。という事を基本としている。
 具体的には、30面の箏を使い、演奏体験をする。その中で、基礎的な奏法を習得し、良さや特徴を感じる。箏そのものを学ぶのではなく、箏を通じて「邦楽の世界」を学ぶ、という方針のもとで、箏曲に加えて、長唄、雅楽、現代曲などできるだけジャンルを広げる工夫をしている。また、一流の専門家による鑑賞教室も毎年企画している。これらの生の演奏は、授業で学んだものがあるが故に、毎回子ども達に大きな感動を与えている。
 授業の発展として、「おこと同好会」の指導運営をし、保護者や地域の理解・協力を得ながら学校内外で演奏発表をしている。
 国際理解教育と関連させた授業にも力を入れている。海外からの留学生を授業に招き、子ども達が和楽器による演奏発表をし、留学生に箏の弾き方を教え、合奏を一緒に楽しみながら交流する。また、民族音楽演奏家も招き、世界中の様々な音楽を鑑賞する。これらの活動によって「世界の中の日本」を意識し、自国の音楽に誇りを持ち、異なる文化へも興味関心を持つ姿勢が顕著にみられるようになってきている。
 邦楽教育を通して日本の子ども達が自国の文化に誇りを持ち、心豊かに成長することを望み、試行錯誤を続けている。
【写真】音楽集会:4年生全員によるお箏を中心とした器楽合奏



審査委員より

邦音の美しさやよさに注目し、小学校音楽教育に三味線や和太鼓、箏を取り入れるとともに、それらを子どもの人格形成に活かしてきたことの意義は大きい。また外国にも日本の伝統音楽のよさを伝えようとしていることも高く評価できる。伝統文化教育のモデルとして、今後も継続して邦楽教育の推進に寄与されることを期待したい。