博報賞

活動タイトル

小学校学級担任が行う外国語活動の価値の追究

平良 優

国際文化・多文化共生教育部門|-| キーワード:母語育成/母文化教育/アイデンティティ確立「総合的な学習の時間」で探究する取組沖縄県
平良 優

活動内容

「コミュニケーション」という視点から英語教育を実践する

 2001年、3学年の担任をもち、総合的な学習の時間の中で外国語指導助手(ALT)とともに英会話の授業を実施していた。子どもたちは英語が話せないながらもALTに話しかけ、コミュニケーションを楽しんでいた。「ことばの壁を越えてつながろう」とする姿に感動を覚え、担任として、「コミュニケーション」という視点から英語教育の一端が担えるのではないかという気づきが生まれた。
 2009年からは外国語活動として「コミュニケーション能力の素地の育成」に向かって授業を進めた。文部科学省による「英語ノート」の指導書を次のような独自のスモールステップに組み立て直した。1単元のステップは①使用語彙の提示②使用語彙に慣れ親しむ活動③使用表現の提示④使用表現に慣れ親しむ活動⑤使用表現・語彙を用いたコミュニケーション活動と進んでいく。英語に苦手意識のある指導者や児童にとっても分かりやすくスムーズに授業が展開できた。2015年現在は、1単位時間のステップとして、①ALTとのティーチャーズトーク②使用語彙の提示③使用語彙に慣れ親しむ活動④使用表現に慣れ親しむ活動⑤コミュニケーション活動⑥振り返り・シェアリングで構成している。
 また、子どもにつけたい力(評価規準)を明確にし、めあてと対応した振り返りを行う授業への転換を図るため、「どんな力をつけるためにこの活動をするのか」を子どもたちに繰り返し考えさせた。すると、楽しいだけの「遊び感覚」から「学習感覚」のある授業へと変容し、授業の質が大きく向上した。さらに、内容面を国語科や社会科と関連させ、知見をつなげることで、子どもたちが主体的に思考する知的な活動へと変化した。
 子どもたちが互いの異なる特性や背景を受容しあうことで実現する「支持的風士」のある学級づくりができるのは小学校の学級担任である。お互いの特性や背景を許し合う心の力は、世界の多様性・多文化を受容することへとつながる力である。英語コミュニケーション能力の基盤であり本質となる「自国と他国のことば・文化・人を尊重しながら、それらと積極的に関わっていこうとする心の豊かさ」を体験的に育成できることが、小学校学級担任が行う外国語活動の価値であると考える。
 
【写真】
アルファベットに慣れ親しむ授業



審査委員より

「ことば・表現」の基本形から応用形の学習を、着実に楽しくかつ子どもの探究心を刺激しながら進めている。さらに、「ことば・表現」を伝え・受け取る相互作用過程で求められる、相手の表情や態度から気持ちを読みとる力を醸成している点も優れている。コミュニケーションの相手も仕方も多様であることを前提に、多様性を受容し相互理解を図ろうとする積極的な態度を育て、子どもの主体的な活動が展開している優れた教育実践である。

プロフィール

沖縄県 平良 優(たいら すぐる)

【役 職】
宮古島市立南小学校 教諭