博報賞

活動タイトル

自然環境保全再生の町民活動とふるさとの教育づくり

高橋 慎

教育活性化部門|-| キーワード:ふるさと学習/地域学習/地域の良さ発見/地域の自然・生き物・特産物遊びや交流のなかで学ぶ・心を育てる/体験的な活動北海道
高橋 慎

活動内容

「オオムラサキ」発見から自然体験活動教育プログラムを開発、ふるさとを大切にする人を育てる

 理科郷土副読本が欲しいとの教職員の要望が発端となり、郷土の生物や地勢・地理・産業・歴史・文化への造詣が深く、町民との人脈や役場職員とのかかわりが強いとの理由から、1985年に栗山小学校選出編集委員として、動物分野を中心に主導的役割を担うことになった。
 栗山町は、冷温帯林から亜寒帯林への移行地域にあたり、北海道の北半分・南半分双方の気候が重複する位置にあるので、農産物と動植物の種類が多い。中でも御大師山は昆虫や植物の宝庫といわれ、ここで「国蝶オオムラサキの生息」を初めて確認した。オオムラサキ生息の北東限であり、これが栗山町のランドマークにもなり、ここから本人の町民活動が始まった。
 1985年以来、子どもたちの体験活動を拡げてきた。学習指導要領に基づく教育課程に組み込むことができるように「川体験学習」等、教育プログラム化に尽力してきた。今では、学校教育でも社会教育でも活用できる「栗山ふるさと自然体験プログラム集・指導事例集」となり、町内外の小中学校が教科や総合的な学習の時間等の年間指導計画に採用し、子どもたちのふるさと自然体験学習が拡がっている。
 栗山ならではのふるさと教育フィールドづくりとして、2001年離農地跡地に20年かけて童謡の見える里山を作ろうと呼びかけ実行委員会を組織した。自然河川に戻す作業や湿生植物の保護等により、ヘイケボタルなど多様な動植物がハサンベツ里山に復活した。今では、町内外の子どもたちの自然体験教育活動のフィールドとなっている。子どもたちは恵まれた自然環境の下で思う存分体験的に活動すると、生命に触れてより素直になり、新しい体験で行動的になり、五感を総動員して集中力を高め、豊かな人間性や生きる力を獲得し、ふるさとを大切にし、ふるさとの良さを継承する人として育っていくと確信している。この30年間の行動理念「ふるさと愛、連携協働、実践行動の開拓者精神」は、栗山の子どもたちに、町民に、そして町外の子どもたちにも広く受け継がれている。

【写真】
ボートによる川体験学習



審査委員より

現地調査によって国蝶オオムラサキの北東限生息を発見したことを契機として自然環境保全をテーマとした息の長い多様な実践活動を、公立学校事務職員というユニークな立場で展開してきた。魅力ある教育プログラムを開発するなど、町民活動のリーダーとして関係諸団体と連携しつつ、「ふるさと教育」に多大な貢献をしている。

プロフィール

北海道 高橋 慎(たかはし まこと)

【役 職】
特定非営利活動法人雨煙別学校 理事