博報賞

活動タイトル

子どもたちの母語育成を支援する多言語電子絵本の制作

多言語絵本の会RAINBOW

国際文化・多文化共生教育部門|| キーワード:母語育成/母文化教育/アイデンティティ確立東京都
多言語絵本の会RAINBOW

活動内容

多文化環境で育つ子どもたちが、絵本を通して複数言語を保持、育成できるように支援する活動

2003年に「母語は日本で役立たない」と、母語で育児をしない外国人の母親たちに出会ったことから、親が自尊感情をもって子育てができるよう、母語や母文化の継承を支援したいと考え「多言語絵本の会RAINBOW」を設立。2006年から東京の区立図書館などで、絵本の多言語読み聞かせを行ってきた。「外国につながる子どもたちの母語育成支援」「日本語で育つ子どもたちの外国語への関心拡大」「在住外国人の母語による社会参加」を目的に活動を行っている。
 具体的には、2009年に1冊の絵本を4言語に翻訳したのを皮切りに、2011年に2冊の絵本を各8言語に翻訳、9言語に音訳。2013年には、日本障害者リハビリテーション協会から、ディスレクシア(読み書き障害)の読者支援システム「マルチメディアデイジー」の制作支援ソフトの無償提供を受け、デイジー規格の電子絵本を制作し、同協会の「ノーマネット」で提供。2015年からはデイジー版とともに、誰もが利用しやすいYouTubeでも動画を配信し、当会のホームページやFacebookで公開。現在、24言語、計125作品となっている。2017年は当会が制作した『ええぞ、カルロス』7言語を大阪市教育委員会とIT企業の協力を得てDVD化し、図書館などで貸出ができるよう準備中である。
 活動は、外国人の母親の自尊感情の向上とともに、その子どもの親の言語への関心を高めることに効果があった。2016年の作品制作にかかわった人たちから「もっと翻訳、音訳したい」と言われ、2017年度は『ごんぎつね』と昔話3話を準備している。
 今後は日本の作品だけでなく、海外ルーツの作品を多言語化することも考えている。また、ジャカルタ日本人学校の校長先生から「学校では日本語で話すことができるが、家に帰ると日本語を使用しない児童生徒がいる。国際結婚家庭の保護者に多言語をもっていることの素晴らしさを教えたい」との声をいただいており、国内だけでなく、海外の日本人学校や日本語教育機関にも情報提供を行い、協力が得られるようにしていきたい。

【写真】
小さい子どもと親に日本語と外国語で読み聞かせ

審査委員より

国を超え、世代を超え、障害を超え、保護者が絵本の読み聞かせを通して、生きるうえでの価値や知恵を子どもに伝える、地道で画期的な取組である。また、保護者と子のそれぞれの自尊感情を尊重し、それぞれの「育て・育ち」を支える取組でもある。その可能性は、母語保持教育の実践のみならず、人的多様性を認め合う交流と支援、時空間を超えた文化価値の継承と鑑賞など、多面的に広がると考えられる。多言語電子絵本の制作に、子どもが参画できる仕組みも組み込まれ、継続・発展が期待される。

プロフィール

東京都 多言語絵本の会RAINBOW(たげんごえほんのかいRAINBOW)

【代表者】
石原 弘子(いしはら ひろこ)

【役 職】
代表
【勤務校所在地】
〒152-0003東京都目黒区
TEL:(090)-9973-8260
E-mail:jcrayons@yg7.so-net.ne.jp
HP URL:https://www.rainbow-ehon.com/

【学校(団体)規模・活動参加人数】
○指導者数: 5名