第56回「博報賞」 博報賞受賞
[岡山県]倉敷市立旭丘小学校
週に一度、国語の時間を利用して倉敷市立旭丘小学校(倉敷市連島町連島)の児童は学校図書館を訪れる。図書館にやってくると、児童はまず借りていた本を返したり、新たに本を借りたりと司書の前に長い列をつくる。その後は思い思いに本棚をのぞき込み、気になった本、司書のおすすめの本などを手にとっていく。児童に話を聞くと「物語で急にすごい事件が起こったり、最後に成功したりすることが面白い」(2年女児)、「生き物の成長の様子が分かる図鑑を読むのが好き」(4年男児)などと読書の魅力や読書を通じて興味を持った事柄について元気に教えてくれた。
同小は2016年から図書館の活用を通じた豊かな読書生活を推進。読書の量、読書の質、授業との関連、豊かな体験の四つを柱に、それぞれの目当てを相互に関連させることで「言葉の力をもとに豊かな人間形成」を図っている。
児童の読書量増加 取り組み前の3倍
読書量を増やす取り組みの中心は「読書通帳」。全児童が本を読み終わった日付や題名を記録し、学年によって短い感想や満足度も書くことで、児童自身の読書の歩みを示す履歴になっている。自分が何冊の本を借りて読んだか、何を感じたかを振り返ることで、本を
読む意欲を高めるのが狙いだ。
この取り組みの効果は顕著で、開始前の15年度に1人当たりの年間平均貸出冊数は33.2冊だったが、開始直後の16年度に同75.5冊になり、多少の増減はあるが右肩上がりに増加している。23年度には同97.6冊と15年度の3倍近くになった。
読書の質の向上では、倉敷市の教師や司書などが作成した推薦図書の冊子を活用している。物語など子どもたちに人気のあるものだけでなく、社会科学や自然科学、産業といった10分類から、年齢に応じて選定された良書が掲載されており、幅広いジャンルに興味を持ってもらえるよう、工夫が凝らされている。
このほか推薦図書を読むごとに冊子の読んだ本の項目にシールを貼って達成感が感じられるようにしていることや、年間の読書目標を達成すると同小のゆるキャラ「あさもりちゃん」シールがもらえることが児童のやる気を盛り上げている。また10分類の本をそれぞれ1冊以上読むことで図書委員手作りのしおりがもらえる「読書ビンゴ」もある。毎年10月には「学級対抗秋の読書運動会」を1カ月かけて開催。同小全校児童が紅白に分かれて貸出冊数を競う。いずれも子どもたちの興味が途切れないようにするための〝作戦〟だ。
このような取り組みで特に人気なのが「多読認定証」。図書館の本を年間100冊読んだ児童を表彰するもので、達成者は表彰状を贈られるだけでなく、図書館に名前を張り出されてお祝いされる。児童が互いの読書意欲をリスペクトし合うきっかけになっている。
地域住民の協力や 児童発の取り組みも
授業と連携した「並行読書」も導入。国語の教科書に載っている作者の別作品や伝記を読むことで、作者の生み出した世界観や時代背景を把握し、教科書の内容をより深く理解する取り組みだ。また地域住民の協力を得て、季節ごとの田植えや稲刈り体験、もちつきなどを児童が実践する活動を、生活科や総合的な学習の時間といった授業で行うほか、土曜開催の地域支援活動でも実施。毎週金曜の朝、地元有志が同小を訪れて行う、読み聞かせやストーリーテリングもあり、子どもたちは言葉から物語の風景を想像する力を知らず知らずのうちに培うことができる。
これらの体験は児童の言葉の土台になるとともに、本に書かれた言葉の奥深さに気づいたり、さまざまなことに興味を持ったりするきっかけにもなる。読書は児童の心の糧となり、友だちや教師、地域住民への共感や敬意も生み出す。同小は、この好循環を地域ぐるみで生み出している。
児童発の取り組みも数多く誕生。学校司書や図書委員らによるおすすめの本を紹介する張り紙に刺激を受け、一般児童も本の紹介カードを手作りするようになったほか、読書週間などには図書委員の5、6年生が下級生の教室を訪れ、絵本や紙芝居の読み聞かせを披露するなどしている。いずれも児童が自発的に始めた活動で、6年の図書委員は「低学年の子が拍手してくれたり、感想を話してくれたりするとうれしい。また頑張ろうとやる気が出る」とうれしそうに話していた。
読書習慣を身に付け 人生を豊かにしよう
「小学生時代に身に付けた読書習慣は一生の宝になる。多彩な語彙や社会常識といった知識、落ち着いた生活態度などが身に付き、豊かな人生を送る上で必ず役に立つ」と話すのは同小の藤田哲彦校長。「推薦図書の活用や読書通帳、読書に関するさまざまな取り組みのおかげで、本校の子どもたちはどんどん読書が好きになり、読書を通じて児童同士のコミュニケーションの輪が広がるという非常に良いサイクルも生まれている」と評価する。
同小の教師らは「読書教育を今後も進め、未来の見通せない時代をたくましく生きてほしい」と願っている。読書活動をますます充実させるため、今後はNIE(教育に新聞を)も導入する。図書館に多くの種類の新聞を置き、児童が時事問題に関心を持ち、読書の幅を広げるのが狙いだ。社会の変化や時代に応じ、取り組みを進化させ、子どもたちの健全な成長を支え続けたいと考えている。
(企画・制作/山陽新聞社メディアビジネス本部 山陽新聞2026年3月13日 掲載分より転載)
※記載の所属・役職は、受賞当時のものです。
博報賞とは
「博報賞」は、児童教育現場の活性化と支援を目的に、財団創立とともにつくられました。日々教育現場で尽力されている学校・団体・教育実践者の「波及効果が期待できる草の根的な活動と貢献」を顕彰しています。また、その成果の共有、地道な活動の継続と拡大の支援も行っています。
※活動領域:国語教育/日本語教育/特別支援教育/日本文化・ふるさと共創教育/国際文化・多文化共生教育 など
第57回「博報賞」の応募受付を4月1日(水)より開始します。
詳細は博報賞のページをご覧ください。
*博報賞に関するお問い合わせ先
hakuhoushou@hakuhodo.co.jp (博報賞担当宛)




