Vol.123 |
2025.09.16 |
「【言い出しっぺ】」のコトダマ
早稲田大学の校歌に、「進取の精神」という言葉があります。
大学時代、法学部の教授が、
「進取の精神とは、言い出しっぺになることだ。
周囲の顔色をうかがって、みんなが言いあぐねているときに、『こうしましょう』と率先して言うことだ。
早稲田大学は、「言い出しっぺ」を養成する大学なんだ」
と言われました。
入学してすぐに聞いたので、大変心に残りました。
40年以上たった今も、鮮明にこの言葉が頭に残っています。
「言い出しっぺ」になるのは、大変です。
クラスで、「こうやろうよ!」と最初に声を上げる。
すると
「じゃ、○○さん、やってよ」
と自分に責任がふりかかってきます。
また、やりたくない子からは、
「そんなの無理だよ」
と否定されることもたくさんあります。
「最初に提案した人が、それを実行すべき。
責任も被るべき」
という暗黙の了解があって、なかなか言い出しっぺにはなれません。
大学で「進取の精神」を学んだはずの私もいつも責任を押しつけられる面倒や、批判されるのが怖くて、躊躇していました。今でも、「言い出しっぺ」になれないときが多くあります。
しかし、「言い出しっぺ」には、よい点もたくさんあります。
まず、人が言えない場面で、口を開くことで度胸がつきます。反対や失敗を恐れない心。
前例がないことに踏み出す勇気。そして責任を担う覚悟が一気に身につきます。
つまりリーダーとなる才覚を得ることができるのです。
また、「言い出しっぺ」になることで、人にやらされるのではなく、自分のやりたいようにやる権利を得ることもできます。
人の命令に従うのではなく、自分の裁量でものごとを動かす力が得られるのです。
確かに、責任は背負います。
しかし、それを上回る利点がある。
人に評価される人間になるには、「言い出しっぺ」のコトダマを肝に据えて、率先して手を挙げることが必要なのです。
フランスの哲学者パスカルは、
「人間は、考える葦である」
と言いました。しかし、考えただけでは弱い葦のままです。
それを声に出したとき、道が拓ける。
誰よりも早く、言葉を発した瞬間に、世界は動き始めるのです。