コラム

Vol.78

by ひきたよしあき 2021.12.15

「図書室」のコトダマ

小学生の頃、本が嫌いだった私は、
図書室には滅多に入りませんでした。

私が通っていた学校の図書室は
暗くて、カビの匂いがしました。
古い本が多く、不潔に思えました。
本に慣れてない私は、

「どこを探せば自分の好きな本が
あるのだろう」

と戸惑うばかり。
物語、絵本、図鑑、写真集、地図などが
壁一面に配置されている。
そのタイトルを読むだけで、怖気づいて、
息苦しくなってしまったのです。

図書室の資料が活用できるようになった
のは、大学生になってからです。
当時、私は、放送局でクイズ番組の
問題を作るアルバイトをしていました。
大学にはろくに通わず、放送局の
資料センターに篭って、クイズのネタ
を探していたのです。

始めた頃は、子ども時代のトラウマが
ありました。やはり息苦しくなりました。

しかし、よく見るとどこに何のジャンルの
本があるのかがよくわかる。
きめ細かく整理されていて、

この内容だと、あの棚のあたりに
あるはずだ」

と思うと大抵そこに目ぼしい本が
あるのです。

大学時代の大半をここで過ごした
私は、今でも新しい事柄を知ると
目を閉じて、放送局の資料センターを
思い出します。

「これを調べるには、奥の部屋の
壁から二段目あたりだ」

と狙いをつける。
すると当時クイズをつくるために
集めた雑学が思い出されてくるのです。

本は、読むことも大切ですが、
読みたい本に出会うことも重要です。
それがなければ、読書好きには
なれないのではないでしょうか。

最近、博報堂教育財団が主催する

「お気に入りの一冊をあなたへ
作文コンクール」

を知ってもらい、「読書推せん文」を
多くの生徒に書いてもらうために
小中学校を回っています。

様々な学校を訪問し、心を打たれるのは
読書機会を増やすための取り組みです。
多くの学校で、図書を専門に扱う
「司書教諭」がいらっしゃいます。

彼ら、彼女らは、子どもたちが
本を手に取りやすいように、日々
本を並べ替え、創意工夫をされています。

子どもたちから、友だちに勧めたい
本を募って、一覧にしている図書室が
ありました。

教科書にでてくる本を一箇所にまとめ、
執筆者紹介を写真入りで張り出している
図書室がありました。

畳で寝転びながら本を読める。
廊下の真ん中の広いスペースを
図書室にし、自由に本棚を眺める
ことができる。

本の並べ方も、子どもたちが
読みたい本をすぐに読めるように
配置図が明確に示されている。
パソコンによる検索を導入している
学校もありました。

町の本屋さんがどんどん減少し、
ネットで本を買う機会が増えている。
しかもコロナ禍で、外に出られない
時間も長かった。

「図書室のコトダマ」が、

「私をもっと充実させて、子どもたちが
本に接する機会を増やしてほしい!」

と叫んでいるように私には
思えます。

読解力、表現力、対話力、
それらの基礎となる読書。
これを底支えする司書教諭の皆さんと
先生方に敬意を表します。
子どもたちの頭の中に、学校の図書室
が丸ごと入って、いつでも欲しい知識が
取り出せるようになることを望んでやみません。

  • ひきたよしあき プロフィール

    作家・スピーチライター
    大阪芸術大学客員教授
    企業、行政、各種団体から全国の小中学校で「言葉」に関する研修、講義を行う。
    「5日間で言葉が『思いつかない』『まとまらない』『伝わらない』がなくなる本」(大和出版)、「人を追いつめる話し方、心をラクにする話し方」(日経BP)など著書多数。