博報賞

活動タイトル

世界初の肢体不自由児者の人形劇団創設と自立支援活動

南 寿樹

特別支援教育部門|-| キーワード:障がい理解推進/心のバリアフリー愛知県
南 寿樹

活動内容

人形劇団の活動を通して、心身に障害のある子どもたちの自己実現と自立を支援する

 1991年に肢体不自由養護学校の学級担当となったときに、おとなしく受け身的な生徒の態度が気になった。そこで、学生時代から親しんできた人形劇での仲間と作った作品で演じ、観客に伝わった時の喜びと感動を生徒たちに伝えたいと人形劇を提案し、活動が始まった。
 肢体不自由児者による人形劇活動の発想は、ほぼ実践例がなかったが、この活動を24年続け、人形劇団「フレッシュ」をはじめ、次々に新しい劇団が生まれていること、そのうち人形劇団「紙風船」は、人形劇で職業自立を目指していることは、世界でも例を見ない。
 「指先が2~3センチしか動かせない」とみるのでなく「指先が2~3センチも動かせる」と考え、少しの力でも動かせる人形をプロの人形美術家の協力を得て考案し、一人ひとりの肢体不自由の機能に合わせて、無理なく操作できる人形を作った。
 脚本は、その基本テーマから障害のある仲間たちの話し合いで決め、テーマ曲や劇中の曲などもすべて自分たちの手作りのため、完成までに約3年ほどかかる作品ばかりである。地域で公演することにより、子どもたちの世界が広がり、自主通学も出来るようになり自信をもてるようになった。また、観客という共感的な他者の励ましにより、「役立っている自分」を意識でき、それが自己肯定感となり自分に誇りを持つことが出来ている。子どもたちが明るく元気に変わっていくのと同じように自分の子どもを褒められた保護者も明るくなっていく。
 こうした県内外の公演に感化され他の養護施設でも人形劇を活動に取り入れたり、次々に人形劇団が誕生したりして人形劇活動が広がっている。「沖縄から北海道まで公演旅行に行く」という結成当初からの夢を実現しただけでなく、2000年にはフランス公演も実現し、子どもたちも「夢は見るものでなく、つくるものだ」と明るく言えるようになった。

【写真】
防災を訴える「稲むらの火」を演じる人形劇団フレッシュ



審査委員より

肢体不自由の子どもが、体を動かしたり、遠くへ移動したりすることは大きな困難を伴うが、人形劇という形態での活動により、あたかも自分の身体のごとく人形を自由に動かし、さらには、国内外の各地へ赴いて人形劇を披露することは、肢体不自由の子どもの自己実現に大きく貢献することだろう。肢体不自由という障害の理解啓発という視点から見ても貴重である。

プロフィール

愛知県 南 寿樹(みなみ としき)

【役 職】
愛知県立大府特別支援学校 教諭