博報賞

活動タイトル

中学校通級指導教室における指導の一考察

大本 市郎

特別支援教育部門|-| キーワード:広島県
大本 市郎

活動内容

 本校は、通級指導教室を開設して4年目を迎える。広島市での中学校の通級指導教室の設置は初めてであり、開設当初は通級システムの構築や指導教材作りが悩みであった。そのような背景から、生徒の状態や主訴、WISC-?に反映される認知特性を検討し、具体的な支援を考え実践していった。具体的には、生徒の認知特性から得意なところを生かす教材を作ったり、苦手なところをどのようにして方略していけばよいかを探ったりしている。授業開始時には、生徒の興味関心のある題材を取り上げ、心理的カウンセリングやエンカウンターも行った。その結果、生徒の表情は明るくなり、授業での発言も積極的になった。また仲間を思いやる気持ちを表現できるようになってきた。教室運営では、本校で在学校担任者会を開催した。その中で校長講話後、アセスメントから認知特性を確認し、生徒への対応について担任と協議した。生徒への具体的な支援を共有することにより、在学校での生徒の行動も落ち着きが出てきたようである。さらに市教委の事業である大学生のボランティアによる教室運営参加を定期的に実施し、大学院生が作成した「DVDを用いた動画によるソーシャルスキルトレーニング」教材を用いた授業も行った。この教材は、演劇部の学生が学校生活場面での適切な言動を演じて作られたSST場面集であり、具体的に示された適切な言動を繰り返し学習できるという点で優れている。この教材で学んだことが実際の学校生活の中で汎化されているかどうかを今後も確認していきたい。卒業生については、保護者、本人の了承のもと、大学入試センター試験の動向も踏まえ、進路先でWISC-?等の総合的解釈・支援方法の説明を行い、連携を図っている。どの卒業生も生き生きとした表情で学校生活、部活動等の様子を話に来てくれることが何より嬉しい。
 最後に、特別な支援を必要とする生徒の母親や家族そのものを支えるという視点をもち、生徒やその家族がいつでも安心して継続相談できるような通級指導教室を目指して、取り組んでいきたい。

【写真】
漢字を書くことや覚えることに困難のある生徒への漢字練習の様子



審査委員より

一貫して中学校における特別支援教育に携わってきている。特に、通級指導教室で学ぶ発達障がいのある生徒へのアセスメント、指導計画の作成、指導の展開、評価を丁寧に進めてきており、高い専門性を有している。地元の大学との連携、教員の自主的勉強会への関与などの活動も積極的に進めている。

プロフィール

広島県 大本 市郎(おおもと いちろう)
役 職:広島市立段原中学校通級指導教室 教諭