博報賞

活動タイトル

地域の伝統・文化・産業・自然の良さを体験し、冊子や「山科かるた」として伝える活動

特定非営利活動法人 山科醍醐こどものひろば 町たんけんチーム

日本文化・ふるさと共創教育部門|-| キーワード:京都府
特定非営利活動法人 山科醍醐こどものひろば 町たんけんチーム

活動内容

 私たちのフィールド「山科」は、京都市街から東山を越えた所の小さな盆地。東にある牛尾山を越えると琵琶湖に出る。2万年前から人が住み、平安時代には条里制の敷かれた村で、現在も多様な文化財や遺跡、清水焼、仏具、金属箔粉等の産業や豊かな自然に恵まれ、人口は136,000人である。しかし「京都」に目が行き、殆どの住民は「山科」のことを知ろうとしない。
 そこで2002年から、地域の人たちと手をつなぎ、支えられ、「この町、大好き!」と思う子どもで溢れる町にしたいとの願いで、毎年10~40人程の異年齢の子どもたちと、活動を続けてきた。この10年間で「だいすき!山科ガイドブック」「たいけん はっけん 町たんけん」の冊子8種類4万冊、「山科かるた」(子どもの絵や言葉が絵札・読み札に生かされ、地域の宝を網羅したもの)1,500箱を地域の小学校・児童館・幼稚園・保育園などに持参し、子どもたちにプレゼントした。常に地域の子ども全体を見据えた活動を続けた結果、子どもを受け入れる企業や寺院などが増え、大人同士のつながりも深まり、地域に輪ができた。
 地域の宝物(史跡だけでなく自然や産業)は、子どもには理解し難い。しかし「すごいやん!」「大事にしなあかんなぁ」と言うことばが自然に発せられる場を創ることこそが、この活動のねらいである。例えば、醍醐寺の五重塔は、国宝だから美しいのでは無く、その姿に魅せられ、子どもたちは、寒さ・暑さの中、懸命にスケッチする。五重塔がそうさせるのだ。また、東海道新幹線に架かる陸橋に登った折、ビューンと走る新幹線に目を奪われていた子どもの一人が、「なぁ・・・ぐるんとまわると、まわり全部が山やで。お皿みたいなところやなぁ。」と、陸橋の上で言った。山科盆地の、彼なりの発見である。私たちの目指しているのは、実感に基づく発見。自分で獲得する、このような小さな成果の積み重ねを大切に、地域の宝物と子どもとの橋渡しをしている。
 今後も地域に根付いた活動を続けていきたい。

【写真】
夏休みを利用して、地元の金属箔粉工場を見学



審査委員より

大学の地域への貢献の一つの形態として全国に発信できるものである。公の精神や社会的自立が大きな課題とされている今日の子どもたちに対し、町づくりという視点から「町たんけん」の具体的プログラムを開発し、子どもたちの主体的活動を尊重しながら、その成果を地域の学校に還元している点など、子どもの学校外活動のモデル的取組といえる。

プロフィール

京都府 特定非営利活動法人山科醍醐こどものひろば町たんけんチーム(とくていひえいりかつどうほうじんやましなだいごこどものひろばまちたんけんちーむ)
【創 立】
2002年