博報賞

活動タイトル

障がいの重い子どものコミュニケーション支援におけるICT活用の推進と教材開発

小西 順

特別支援教育部門|-| キーワード:和歌山県

活動内容

脳性まひなど重度の肢体不自由児は、発声や発音に重い障がいをともなうことが多く、自分の意思や感情を周囲にうまく伝えることができない。また肢体の運動が著しく制限されているため、日常生活の全般に介助が必要で、筆記や描画、工作や楽器の演奏など、学習に必要となる活動の多くに困難を生じる。そのためコミュニケーションや学習が受け身なものになりがちで、学校の授業でも子ども自身が主体となって発言や発表を行ったり、作業や遊びを楽しんだりする場面が不足している。
 そこで、障がいの重い児童生徒に対しても授業でのICT活用を進めることにより、自己選択/自己決定の力を育み、心の自立を目指して生活の質を高めたいと考えた。コンピュータ等の情報機器を活用し、一人ひとりの子どもの発達や興味・関心に応じた教材ソフトウェアを導入することで、活動の幅を広げ、潜在していた子どもの可能性を引き出すことが可能になる。例えば、「バナナケーキ電子レシピソフト」では、障がいの重い子どもがスイッチを押すことで、他の仲間に作業の内容を指示し、調理実習の中心になって授業に参加することができる。これまでに、こうした教材ソフトウェアを独自に40種類以上開発してきた。
 しかし、授業でのICT活用は限られた教員の取り組みに終始する傾向があった。そこで誰もが実践できるように、教員の授業を補助するシステムを開発してきた。系統的(楽しみ別)に教材ソフトを活用するための「個別課題アプローチ表(DVD)」である。現在、このアプローチ表と教材ソフトウェアは、他の学校や療育機関でも利用されるようになってきた。またICT活用の教育実践を広げるため公開研修や公開授業を積極的に行っている。毎月第三土曜日には、卒業生や保護者、地域の特別支援学級の教員を対象として、支援機器の紹介やソフトウェアの講習、利用の相談等を行うパソコン支援教室を開催する(前任校)など実践の成果と楽しみの共有に努めてきた。

【写真】
「スイッチで遊ぼう」の研究テーマ授業を展開



審査委員より

長年にわたり、障がいの重い子どもたちのコミュニケーションの改善やモチベーションの向上、また、一人ひとりの自立と多様性の実現をめざして、個々の特性に合った多くのICT活用教材を作成した。同時に、より多くの人々に教材を活用してもらうための普及活動にも力を入れ、ICTの活用に習熟していない教員のための指導資料、また、地域への支援技術の普及のためのパソコン支援教室の開催などにも尽力してきた。

プロフィール

小西 順