Vol.136 |
2026.10.15 |
【季語のコトダマ】
月、うろこ雲、こおろぎ、とんぼ、新米、さんま、運動会。
これらの共通点はわかりますか?
すべて秋の季語です。
季語とは、季節を感じさせる言葉のこと。俳句によく用いられます。
「月なんて、秋じゃなくても出ているよ」
とあなたは思うかもしれません。
でも、秋は、空気が澄み、月がひときわ美しく見えます。昔の人は、その美しさを見逃さず、「月」という言葉に秋の気配を込めたのです。
松尾芭蕉はこんな句を詠みました。
「名月や 池をめぐりて 夜もすがら」
あまりに月がきれいなので、池のまわりを歩きながら、一晩中月を眺めていたよ。そんな意味です。ビルもネオンもない時代に浮かぶ月はよほどきれいに見えたのでしょう。
小林一茶は、こんなふうに詠みました。
「名月をとってくれろと泣く子かな」
お空に浮かぶきれいなお月様がほしい。「お月様をとってちょうだい!」と子どもが泣いている。子どもには、月が遠い天体ではなく、手を伸ばせば届きそうなきれいなものに見えたのでしょう。
同じ秋の月でも、見る人によって感じ方は違います。だからこそ「月は秋」と季語に決めて、その感じ方を表現する面白さがあるのでしょう。
【季節を味わいましょう】
ごぼう、にんじん、さつまいも、れんこん、しいたけ。
スーパーに行けば、いつでも手に入る食材です。でも、これらは秋が旬のもの。
いつでも手に入るので、季節など関係なく食べるようになってしまいました。
それでも、梨やぶどう、さんまや柿を食べると、「あぁ、秋の味覚だな」と
あなたも思うのではないでしょうか。
季語には、そんな忘れかけた季節を思い出させてくれる力があります。
「季語辞典・歳時記」という、季節の言葉を春夏秋冬に分けて、意味や使い方を説明した辞典を眺めていると、昔の人がどんなものに季節を感じていたかがわかります。
四季折々の「季語のコトダマ」を知ることができます。
俳句を作るのが趣味だった私の父は、くたびれた「季語辞典」を持っていました。
私もそれを眺めるのが好きで、ビールやサングラスなどが夏の季語になっていたり、マスクや風邪が冬の季語として載っていたりすることに驚いたものです。
少し季語を意識するだけで、季節の感じ方、楽しみ方が変わるものです。
もっとも最近は、酷暑が続いたり、台風が何度も来たりして、日本の四季を感じるのがむずかしくなりました。だからこそ、自分の感覚で、「小さい秋」を見つけていくことが大切なのではないでしょうか。
今晩、ぜひ夜空の月を眺めてください。
晴れていれば、くっきりと美しく見えるはずです。
月を眺めることを習慣にしてください。
それだけで、あなたの季節に対する感覚は、鋭敏になります。
季節を感じる心が、磨かれていきますよ。






