コラム

Vol.135

by ひきたよしあき 2026.09.15

「復習のコトダマ」

小学校5年生で転校した学校は、前の学校より勉強に厳しい学校でした。

月に一度、「月末テスト」がありました。
その月に学んだ国語、算数、理科、社会がテストされ、クラス順位が張り出されました。

テストなんて、時々「小テスト」をやるくらいの学校から転校してきた私は、苦しみました。

今でも忘れもしません。その時の順位は、33位。
下から数えた方が早いくらいでした。

「これは、とんでもない学校に来てしまった」

まだ、友だちもいなければ、前の学校とは学ぶ速度も順番も違います。

次のテストが嫌で仕方ありませんでした。
翌月、またテストがありました。

ひどい成績でした。
さらに追い打ちをかけるように、こんなテストもありました。

「1週間後に、もう一度、同じテストをする」

1週間後に、まったく同じ内容のテスト用紙が配られ、以前、間違えたところを復習できているかを確かめる。

テストなど、一度終えたら見向きもしない私は、毎月の「月末テスト」以上にショックでした。

「復習テスト」は、算数に限られていました。
私は、テスト用紙の右半分を占める図形の問題の大半ができていませんでした。
しかも、そのうちの1問は、前の学校で教えられていない問題でした。

これでは、解き方がわからない。

仕方なく、先生のところに行き、事情を説明しました。

すると先生は、懇切丁寧にずいぶん時間をかけて、問題の解き方を教えてくれたのです。それどころか、前の学校で学んでいない箇所まで、教えてくれました。

私はこれに感激し、

「せめてこの1問は、テストで○をもらいたい」

と思って、何度も同じ問題を解きました。

2日、3日して、先生のところに行くのが怖くなくなった私は、他の間違えたところも教えてもらいに行きました。

先生は、ニコニコしながら、大笑いするような話をいくつか挟みながら教えてくれました。紙を何枚も使って、大きな図を描き、解答までの手順を教えてくれたのです。

私は、この箇所も何度もやり直しました。
すると、だんだんと欲が出て、テスト前半の計算問題もやり直すようになりました。たった1週間のできごとですが、私の勉強に対する取り組みは大きく変わりました。

1週間後の試験で、私は100点を取りました。もっとも「復習テスト」なので、多くの子が100点だったのですが、うれしかった。テストそのものより、この学校で暮らしていく度胸がついた気がしました。

とかく勉強は、新しい問題に挑戦することに重きを置きがちです。
参考書や問題集をどんどん先へ解き進めることに関心が向き、できなかった箇所をできるようにしていく作業を怠りがちです。

間違えた箇所を見るのは、いやなもの。
できない自分を知るのは、つらいもの。

しかし、そのできないところをできるようにする復習にこそ、勉強のコトダマがこもっているのではないでしょうか。

この「復習のコトダマ」は、私の勉強のスタイルを大きく変えました。

今から思えば、「間違えたところをやり直す」ことは、私の人生の指針にもなっている気がします。

小学5年生のときに教えられた「復習のコトダマ」は、今も私の中で生きています。

  • ひきたよしあき プロフィール

    作家・スピーチライター
    大阪芸術大学客員教授
    企業、行政、各種団体から全国の小中学校で「言葉」に関する研修、講義を行う。
    「5日間で言葉が『思いつかない』『まとまらない』『伝わらない』がなくなる本」(大和出版)、「人を追いつめる話し方、心をラクにする話し方」(日経BP)など著書多数。