Vol.119 |
2025.05.15 |
ことばのコトダマ
あなたは、「嬉しい」と「楽しい」の違いを説明できますか。
どちらも、「他の人」や「もの」「できごと」との関係で生じる気持ちです。でも、どういう場面で使うでしょう。
考えてみてください。
いかがですか。
「嬉しい」は、大好きな人と出会ったり、プレゼントをもらったり、先生にほめられたときなどに言っていますよね。
つまり、好ましいことが起きた瞬間にパッと浮き立つ気持ちが「嬉しい」なんですね。
では、「楽しい」はどうでしょう。
「ハイキングは楽しかった」「山田さんといっしょにいるのは楽しい」などというときに使っていますよね。
「嬉しい」が瞬間の言葉に対して、「楽しい」は継続的。
自分が経験したり、考えたり、行動することを通じて湧きわがる好ましい気持ちなんですね。
「嬉しい」と「楽しい」
こんな当たり前のような言葉でも、私たちはその違いを言葉で説明したり、どのような時に使うのかを語れません。
なぜなら、日本語が母国語だから。
生まれたときからずっとその言葉を聞いて、頭でわかるよりも体に染み込ませるようにして覚えてきた言葉だからです。
母国語は、それを教える人、周囲の環境が、正しい言葉を使っていれば、子どもはそれを覚えて正しく活用できます。
しかし、大人があいまいで、いい加減な言葉の使い方をしていると、子どもはそれを正しいと信じて覚えてしまいます。
私が教えている学生で、
「1時間弱」
という言葉を「60分を少し過ぎた時間」と答えた子がいました。
「そうではなくて、『弱』は、四捨五入で切り上げた数字を指すんだよ。だから58分のように、60分より少し足りない数字なんだ」
と説明すると、驚いて、親から、60分より多い数字だと習い、家族はみんなそう思って行動しているというのです。
これはほんの一例ですが、教える側に間違いがあれば、子どもは簡単に言葉の意味や使い方を間違えてしまいます。
子どもに言葉を教えるには、まず大人が自分の使う言葉が正しいかどうかを学ぶ必要があります。
例えば「イライラする」と「むしゃくしゃする」
交通渋滞のように、思い通りにいかない理由が明確なときは、「イライラする」
理由もなく、なんとなく気分が晴れないときは「むしゃくしゃする」
絵文字やスタンプで会話をすることが増え、言葉の解釈があやふやになりつつある。
こんな時代だからこそ、言葉本来のもつ意味「ことばのコトダマ」を大切にすべきだと思うのです。
さて、みなさん、
「しょんぼり」と「くよくよ」するのの違いはわかりますか?