博報賞

活動タイトル

離島地区(八重山諸島)における地域と個のニーズに応じた特別支援教育の展開

大田 幸司

特別支援教育部門|-| キーワード:沖縄県

活動内容

八重山諸島は石垣島を中心に9の有人島からなる離島地区である。専門機関は無く、医療相談等は沖縄本島からの巡回に頼らなければならない。竹富町や与那国町の更なる離島にも生活や学習上の困難を抱えた子どもたちがおり、へき地であるが故に十分な支援が受けられずハンディが二重に降りかかる現実があった。この離島に特別支援教育の支援体制を構築することは急務であった。
 郡内の小・中・高30余りの学校に直接出かけ、校内研修・教育相談・就学相談等を行い、十分知られていなかった特別支援教育、発達障害について基本的な考えを広めた。又それぞれの学校で教育支援を実施。教育的ニーズを把握し、授業観察・心理検査を行い、その実態をもとに学級担任や保護者とよりよい支援方法を考えた。このノウハウはこれまで離島には無い方法であった。県外から発達障害に気づかず移住した人もおり、教育相談、巡回医療相談に繋ぎ、障害を理解・受容した方もいる。
又特別支援学校の「センター的役割」の推進、八重山地区の「特別支援教育地域連携協議会」「専門家チーム」「巡回相談員」の開設時のキーパーソンとなった。福祉・保健・教育機関を繋ぎ、互いに声をかけ合い、関係機関が共同で相談会を実施する等「顔が繋がる『島ネットワーク』」の構築に大きく関わった。専門的な研修機会のない地域であったが特別支援学校のセンター的機能の一環として、「筑波大学特別支援教育研究センター」の「e-ラーニング」による講義の配信をコーディネートした。又特別支援教育を推進する仲間と共に研究会を設立。中央からの専門家を招き、特別支援教育講演会を開催している。
 特別支援教育のスターターとして役割を果たし、その芽は確実に育っている。特別支援学校はセンター校として、地域支援にも力を入れている。島の「結いまーる(相互扶助)」の土壌の中、離島のハンディを『島ネットワーク』で補い、島に根ざした特別支援教育をこれからも模索していきたい。

【写真】
八重山地区で初めて立ち上げた「特別支援教育研究会」



審査委員より

沖縄、八重山という地域的な不利さの中で、特別支援教育をリードし、そうした子どもたち、家族を受け入れる窓口として活躍し、高い専門性を磨く不断の努力を続けられた。地域の学校、教師の先駆的指導者として信頼され、保護者、教師たちの精神的支柱でもある。近県からもその人ありと広く知られており、これからのさらなる活躍も期待できる。

プロフィール

大田幸司