日本研究
フェローシップ

第15回、第16回交流会

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2021年9月25日(土)10:00~12:30
開催方法:オンライン(Zoom)

第15回、第16回合同の交流会を開催しました。両回の招聘研究者のうち、すでに来日されている招聘研究者と新型コロナウイルス感染症の影響で招聘延期となっている招聘研究者、合計13名をオンラインで結ぶかたちで、それぞれ自己紹介や主な研究内容等について発表していただきました。

第15回、第16回 招聘研究者

第15回、第16回の招聘研究者(来日中の招聘研究者5名、招聘延期中の招聘研究者8名)のプロフィールをご紹介します(姓50音順・敬称略)。

日本語・日本語教育研究

  • 石原 俊一(イシハラ シュンイチ)
    オーストラリア国立大学・准教授(オーストラリア)
    『日本語の書き言葉に見られる個人性の言語学的研究:テキストメッセージを中心に』

    「私が研究しているのは、法科学的著者認識です。今回日本で行うのはその基礎部分です。現代はテキストを用いたコミュニケーションが活発化し、その匿名性・利便性から犯罪にも使用されます。同一人物が書いたか否かというテキストメッセージの『個人性』を示すものにはどんなものがあり、どんなものが有効なのか、国立国語研究所のデータを用いて評価し、明らかにしたいと思っています」
  • 出丸 香(イデマル カオリ)
    オレゴン大学・教授(アメリカ)
    『日本語における外国語なまりの要因と影響』

    「新型コロナの厳しい状況の中で日本に来ることができ、研究を進められることに感謝しています。今回は、日本語における外国語なまりの音響特性や、外国語なまりに対する社会的評価と聞き手側の要因を研究します。当初は発語データを対面で収集する計画でしたが、コロナの影響で国立国語研究所のコーパスを使用することになり、研究方法としても新しいチャレンジになるので楽しみです」
  • ウォーカー 泉(ウォーカー イズミ)
    シンガポール国立大学 語学教育研究センター・副所長(准教授)(シンガポール)
    『高度外国人材育成における日本語教育の意義と課題(日本に就職したシンガポール人日本語学習者 のライフストーリー分析から)』

    「この度は貴重な研究の機会をいただき、ありがとうございます。シンガポールでは多くの学習者が熱心に日本語を学習しており、日本で就職する例も増えています。そうした卒業生を対象に、日本の生活でどのように日本語を使えているのか・使えていないのか、TEM(複線経路・等至性モデル)という手法で調査・分析し、高度外国人材育成のための日本語教育を発展させたいと考えています」
  • 水川 淳(ミズカワ ジュン)
    レイクフォレストカレッジ 社会・人類学部 宗教学部・非常勤講師(アメリカ)
    『生命の宿る世界の果ての生態系:3.11津波に被災した東北沿岸漁村におけるコミュニティー先導型 復興事業』

    「私が研究拠点とする宮城県気仙沼市本吉地区はもともと過疎化・高齢化が進む地域で、東日本大震災で壊滅的な打撃を受けました。それにもかかわらず地区住民は震災後、異例のスピードで集会所を再建、コンクリートの防潮堤に海浜植物を再生させるなど、『海とともに生きる』新たな地域社会を生み出しています。この特異な住民主導型復興をテーマに、聞き取り調査や参与型観察に取り組んでいます」
  • 吉田 安岐(ヨシダ アキ)
    パリ大学 フランス東アジア研究所・専任講師(フランス)
    『60 年代、70 年代初期における日本の作家とアジア・アフリカの作家との文学的交流、又同時期日本に おけるアジア・アフリカ文学の受容』

    「このたびは招聘いただき、ありがとうございます。私は3年前に在日朝鮮人文学についての博士論文を執筆し、今回の研究テーマに興味をもちました。今回の滞在中に1958~88年に8回行われたアジア・アフリカ作家会議や、日本でのアジア・アフリカ作家の認知を広げる活動・交流について、文献調査をする予定です。最終的にその交流が日本や世界の文学にどのような影響を与えたかを考察したいです」

日本語・日本語教育研究

  • NGO Huong lan(ゴ フォン ラン)
    ベトナム社会科学アカデミー附属東北アジア研究所・日本研究センター・重要研究員、日本研究センター副所長(ベトナム)
    『日本とベトナムのコミュニケーション文化特徴の比較:― 「挨拶」、「ほめ」、「謝罪」と「断り」の発話行為を考察』

    「当初は9月1日に日本で研究を始める予定でしたが、コロナで延期になり残念です。現在はベトナム国内で資料収集やオンライン調査を行っています。12月に来日したら、東京外国語大学の野平先生のご指導のもと、現地調査を行い、ベトナムにおける日本語教育・日本研究に貢献したいと思います」
  • 図雅(トヤー)
    内モンゴル大学 モンゴル学学院・教授(中国)
    『モンゴル語を母語とする日本語学習者の音声データベースの構築 ― 学習者音声変異に関する音響音 声学的研究のために ―』

    「このたびは貴重な機会をいただき、ありがとうございます。今回の招聘研究では、モンゴル語話者が話した日本語を収集してデータベース化する予定です。今の段階では、調査票や資料の準備をしているところです。コロナが収まったら来日して研究を進め、期待に添えるように頑張ります」

日本文学・日本文化研究

  • 高 兵兵(ガオ ビンビン)
    西北大学・教授(中国)
    『絶海中津「蕉堅稿」の研究』

    「私の専攻は日本漢文学です。学位は大阪大学で取りましたが、帰国後は西北大学の五山文学の研究チームに加わっています。今回行うのは五山僧・絶海中津の『蕉堅稿』の研究です。将来的に『蕉堅稿』に充実した注釈をつけ、中国で出版する予定です。12月には日本に行けたらと思います」
  • 吳 偉明(ゴ イメイ)
    香港中文大学・教授、学科長(香港)
    『近世における中国民俗宗教の現地化』

    「専門は、近世日中交流史と同思想史です。今回は主に文献とフィールドワークに基づいて、近世に中国の民が海を渡り、日本の文化や宗教にどのように組み込まれていったかを研究します。研究は1年前から始まっており、今後の1年は学会発表と論文執筆で研究成果を発表します」
  • 蘇 明仙(ソ ミョンソン)
    済州大学・教授(韓国)
    『日本列島がみた「朝鮮戦争」― 1950 年代に発表された文学作品を中心に ―』

    「韓国で日本文学を教えています。済州島に来てから沖縄文学や在日朝鮮人文学も読むようになり、今回のテーマにたどりつきました。今は東京外国語大学の友常先生にお世話になり、こちらで手に入る資料から読んでいます。12月には何があっても日本に行って研究に取り組みたいです」
  • RALEIGH Matthew Patrick(フレーリ マシュー パトリック)
    ブランダイス大学・准教授(アメリカ)
    『戦後の日本の漢詩雑誌と詩の正典(カノン)』

    「今回の研究テーマは戦後日本の漢詩文の雑誌です。戦後の日本の漢詩文学がどのような変遷をたどったか、当事者の漢詩文に対する考え方がどう変わったか、といった問題について考えます。来日の延期は残念ですが、早く日本に行って研究を開始し、皆様に実際に会う日を楽しみにしています」
  • POULTON Mark Cody(ポールトン マーク コーディ)
    ヴィクトリア大学・教授(カナダ)
    『都市及び地方演劇祭の社会的・文化的な役割』

    「カナダのヴィクトリア大学でほぼ30年間、日本語、日本文学、日本文化と日本の演劇を教えてきました。今回は日本の都市と地方の演劇祭を研究します。招聘が1年延期になりましたが、10月中旬に来日した後はできる限り演劇祭を見に行き、関係者にインタビューをしたいと思います」
  • REZAEE Alireza(レザーイー アリレザー)
    テヘラン大学 外国語学部日本語日本文学科 兼 テヘラン大学大学院 世界研究科日本学専攻・助教(イラン)
    『無常の比較研究:日本の無常観と「ハイヤーム」の無常観の比較を中心に』

    「研究テーマは無常の比較研究ですが、まさか自分も無常の波に巻き込まれるとは思ってもみませんでした。本来は2020年9月から日文研の荒木先生のもとで勉強・研究する予定でしたが、今のところはリモートで進めています。今後の予定はわかりませんが、来日を楽しみにしています」

招聘研究者の発表の後は、受入担当教授からのお話、受入機関ご担当者の紹介が続き、最後に6 人の審査委員からご挨拶をいただきました。「招聘研究者ご本人も受入機関の皆様も、コロナ禍で調整がたいへんだったことと思います。今日はこのようなかたちですが皆様とお会いでき、楽しい時間でした。次はぜひ対面でお会いしましょう」という井上優審査委員長の言葉を皮切りに、各審査委員の先生方から、来日している招聘研究者・来日延期中の招聘研究者それぞれに対し、コロナ禍の苦労をねぎらい、研究の発展を願う温かい言葉が贈られました。
全体の交流会の後は、例年行われていた懇親会に代わり、Zoomのブレイクルーム機能を使い、研究者同士で自由な交流の機会をもっていただき、12時30分に閉会となりました。

※第14回より、博報日本研究フェローシップの関係者交流イベントの名称を「懇談会・懇親会」から「交流会」へ変更しました。