2025年度の入賞団体の声

2025年度の入賞団体の先生方に、各団体の取り組みのほか、応募のきっかけ、読書推せん文に取り組んだときの児童・生徒の様子、コンクール参加後の読書活動の変化などについて、コンクールを主催する博報堂教育財団がお話を伺い、対談しました。
※お話を伺った先生の肩書きは2026年度のものです。
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姫路市立豊富小中学校
(兵庫県)
「本を誰かに届ける」体験が、子どもたちを変えていく

(左から)中馬淳常務理事、畑田千香教諭
子どもたち自身がつくる、読書のきっかけ

畑田千香教諭
子どもたちが楽しみながら
主体的に読書と向き合う取り組みを推進。
畑田千香教諭(以下、畑田) 豊富小中学校は、小中一貫校として地域に根ざした教育を行っています。規模としては大きくはありませんが、その分、子どもたち一人ひとりの顔がよく見える環境です。「自分たちで考え、行動する」ということを大切にしており、日々の活動の中でも主体性を育てることを意識しています。
博報堂教育財団(以下、財団) 読書活動にも、その考え方が表れているのでしょうか。

中馬淳常務理事
畑田 そうですね。本校では、日常の中で活字に触れる機会を大切にしています。その一つが朝の時間を活用し、新聞に触れる「NIEタイム※1」です。読むだけでなく、ちぎり絵を作ったり、グループで「の」という文字を探してみたりと、多様な関わり方を通して親しんでいます。そうした時間の中で、活字に慣れると同時に、自然とコミュニケーションが生まれ、言葉を交わす経験へとつながっています。
また、司書の先生が長く在籍されていて、子ども一人ひとりに寄り添って本を手渡してくださいます。読み聞かせもとても大切な時間で、子どもたちは楽しみにしています。本を「読ませる」のではなく、本と「出会わせてくれる」存在ですね。
財団 本をテーマとした、子どもたち主体の取り組みもあると伺いました。
畑田 本校ならではの取り組みとして「本の福袋」を実施しています。これは当校の先生方が、一人一冊ずつ選びメッセージを添えて、福袋にしているもので、子どもたちが袋を選び、開けて初めて本と出会う仕組みです。中身が見えないことで興味が引き出され、40~50冊ほどですが、毎回取り合いになるほど人気の企画です。読んだ後に「楽しかったです」とお手紙をもらったり、「先生の字を久しぶりに見てうれしかった」といった声もあったり、子どもと先生をつなぐきっかけにもなっています。
さらに、子どもたちが自ら制作した作品を図書室の本として貸し出す取り組みも行っています。当校では、多くの子どもたちが学習から発展して、図鑑や物語、地域の祭り、自身の興味のあるテーマなど多岐にわたる本を制作しており、主体的な学びと創造性を育んでいます。そうした本についてもバーコードを付けて実際に借りられるようにすることで、「読まれる経験」が生まれ、また大きな刺激となっているようです。


「誰かに読んでほしい」という想いを形に。
子どもたちが制作した本を、図書室で貸し出し。

物語の世界を自分たちの手で
地図として表現。
これも「自らつくる」読書活動の
大切な一歩。
財団 素敵な取り組みですね。読書環境としての図書室の役割はいかがですか。
畑田 図書室は本を読むだけでなく、子どもたちにとって居心地の良い場所でもあります。高学年になると利用が減ることもありますが、それでも息抜きの場として足を運ぶ子もいます。写真集のように気軽に楽しめる本もあり、それぞれの関わり方ができる場所になっています。

思い思いに過ごせる居心地の良い場として存在する図書室。
「みんなで取り組める」コンクール。
読むこと、を広げる仕組み
財団 コンクールへは継続的にご参加いただいていますが、きっかけを教えてください。
畑田 子どもたちが誰でも取り組みやすい点が大きいです。文字数も適切で、「これなら書けそう」と思う子が多いと感じています。とくに「誰かにすすめる」というテーマは、子どもたちにとって自然に入りやすいものです。本校の子どもたちは素直で一生懸命ですが、自分の思いを言葉にすることに少し苦手意識があります。その点、「お気に入りの一冊をあなたへ」というネーミングは魅力的で、「誰かに届ける」という目的があることで、自然と書き出せるようになっています。また、学年にとらわれず本を選べる自由さも大きな魅力です。
財団 実際の子どもたちの反応はいかがでしたか。
畑田 「妹に読んであげたい」「友だちにすすめたい」といったように、相手を思い浮かべることで自然と書ける子が増えました。
財団 そこがこのコンクールの大きな特長のひとつです。「どの本を、誰に」と考えることで、書くべきことが明確になります。コンクールのホームページも活用していただいていると伺っています。
畑田 「お気に入りの一冊ライブラリー※2」を参考にしています。ほかの作品を見ることで、「こんな書き方もあるんだ」と、子どもたちが気づくきっかけになります。
財団 子どもたちが新しい本や表現に出会う場として、役立てていただければと思います。団体賞に贈られる10万円分の図書カードはどのように活用されましたか。
畑田 学級文庫の充実に使わせていただいています。子どもたち自身が読みたい本を選び、価格やISBNコード※3まで調べてリスト化し、購入したい本を投票で決めています。予算を超えないように話し合ったり、ジャンルの偏りを調整したりと、本を選ぶ過程そのものが学びになっています。また、新刊を手に入れる貴重な機会にもなっていて、子どもたちの読書意欲につながっているようです。今後も、こういった本に親しむ機会をつくっていきたいです。
財団 本コンクールを通じて、子どもたちの読書意欲がさらに高まっていくと、うれしいですね。
※1 NIE(Newspaper in Education=読み方「エヌ・アイ・イー」)タイムは学校の朝の時間などで、新聞を教材として活用する時間のこと。NIEは日本だけでなく世界80か国以上で実施されている。
※2 お気に入りの一冊ライブラリー…過去の受賞作からおすすめの本を検索できる、博報堂教育財団運営のブックガイドサイト。
※3 世界中で発行される書籍を1冊ずつ特定できる「国際標準図書番号」。





