2025年度の入賞団体の声

2025年度の入賞団体の先生方に、各団体の取り組みのほか、応募のきっかけ、読書推せん文に取り組んだときの児童・生徒の様子、コンクール参加後の読書活動の変化などについて、コンクールを主催する博報堂教育財団がお話を伺い、対談しました。
※お話を伺った先生の肩書きは2026年度のものです。
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平群町立平群北小学校
(奈良県)
読書は「出会いの積み重ね」

森下展弥校長(中)、中岡麻子司書(右)
「読書が日常になる」
本と出会う仕組みづくり
森下展弥校長 本校は来年で創立50周年を迎えます。児童数は約300名、自然豊かな環境の中で子どもたちはのびのびと学んでいます。朝の元気なあいさつが印象的な、落ち着いた雰囲気の学校です。また、地域とのつながりも強く、登下校の見守りや学校活動に多くの方が関わってくださっています。「心がぽかぽかする学校」を目標に、子どもも大人も笑顔で過ごせる環境づくりを心がけています。

中岡麻子司書

森下展弥校長
博報堂教育財団(以下、財団) 地域との関わりが、図書活動にもつながっているのでしょうか。

地域の方々にも支えられながら、
子どもたちが本と出会い、
人とつながる場所。
中岡麻子司書(以下、中岡) 図書室には地域の方がボランティアとして関わり、月に一度、本の整理や季節の掲示づくりなどを一緒に行っています。保護者に加え、卒業生や元保護者の方々も継続して関わってくださり、図書室は学校の中にありながら地域に開かれた場となっています。本を通して人とつながる経験が日常にあることは、子どもたちにとって大きな意味を持つと感じています。
財団 図書室づくりで大切にされていることは他にもありますか。

中馬淳常務理事
中岡 「入りやすく、居やすい場所」であることを大切にしています。本を読むだけでなく、ふと立ち寄れる場でありたいと考え、くつろげるスペースなど環境づくりにも工夫を重ねています。本が好きな子もそうでない子も自然と足を運び、その中で本との出会いが生まれていけばと考えています。
財団 日頃の読書の取り組みについて教えてください。


本に貼る学年別シール(下)。
本とシートを連動させることで、子どもたちが自分に合った一冊と出会える仕組みが整えられている。
中岡 学年ごとに60冊の「おすすめの本」を用意し、リスト化をしています。物語や科学、歴史、絵本など幅広いジャンルをそろえ、子どもたちが偏りなく本に出会えるようにしています。もともとは「好きな本に偏りがちなので、幅広く読める仕組みをつくりたい」という先生方の相談がきっかけでした。読んだ本にはチェックをつけ、低学年では読書ノートとして活用しています。さらに、一定の冊数を読むと貸し出し冊数が増えたり、しおりのごほうびがもらえたりと、「もう少し読んでみよう」という意欲につながっています。本の内容は毎年見直しながら更新しています。読書は「やらされるもの」ではなく、「出会いの積み重ね」。一人ひとりが自分のペースで本と関われる環境づくりを心がけています。
財団 コンクールへの参加のきっかけは何だったのでしょうか。もともと「本をすすめる」読書活動はされていたと伺いました。
中岡 図書室で購読している小学生新聞でこのコンクールを知り、その後参加したセミナーで紹介チラシをいただいたことがきっかけです。本校では以前から、国語の授業で1年生から6年生まで本をすすめる活動を行っており、友だちの前で紹介したり、読み聞かせや4コマ漫画で表現したりと、学年に応じて取り組んできました。作品は図書室に掲示し、お互いに見合えるようにしています。こうした積み重ねにより、「誰かに本を届ける」ことが日常に根づいていたため、このコンクールのコンセプトが非常にしっくりきて、子どもたちにとっても取り組みやすいと感じました。
“届ける一冊”が、子どもを動かす
財団 コンクールに向けたサポートで工夫された点はありますか。

関心を引き出し、本に手を伸ばすきっかけを生んでいる。
中岡 まず、公式サイトを活用し、過去の入賞作品や書き方を子どもたちと共有しました。「こういう書き方があるんだ」と具体的にイメージできることが大切だと感じています。また、校内には手づくりのポスターを掲示しました。取り組み開始時と、締め切りが近づいたタイミングの両方で掲示することで、自然と関心が高まるようにしました。ポスターを見て「この本、読んでみたい」と興味を持つ子も多く、本との出会いを生むきっかけにもなりました。
財団 コンクールへの参加について、子どもたちの反応はいかがでしたか。
中岡 本が好きな子はすぐに書いて持ってきてくれましたし、悩んでいる子は一緒に考えて、言葉を引き出していきました。「誰に届けたいか」を決めることで、自然と伝えたい内容が見えてくるんです。また、友だちからすすめられた本は手に取りやすく、そこから新たな読書へとつながっていく様子も見られました。子ども同士のやり取りが、読書の広がりを育んでいると感じています。
財団 副賞の図書カードはどのように活用されていますか。
中岡 受賞を聞いたときは私自身とても驚きましたし、子どもたちもとても喜んでくれました。担任の先生が子どもたちにアンケートを取り、「教室にあったらうれしい本」を選んでもらいました。自分たちで選んだ本が教室に並ぶことで、日常の中で自然と本に向き合うようになります。クラスごとに選ばれる本も異なり、それぞれの興味や個性が反映される点も印象的です。自分たちの声が形になる経験は、読書への関わり方にも変化をもたらしています。
財団 最後に、読書活動への思いを教えてください。
中岡 子どもたちに「読ませる」だけでなく、「読んであげる」ことも意識しています。自分から手に取れない子も、読み聞かせをきっかけに本の世界にひかれていくことがあります。本は、人と人をつなぎ、世界を広げてくれるものです。このコンクールも、その一歩となる機会だと感じています。


盈進中学校
(広島県)
「言葉の力」は、読書を起点に育まれる

大切に掲げられている。
(左から)上山朋子教諭、
博報堂教育財団 中馬淳常務理事
「言葉の力」を育てることが、
すべての学びの土台

読書教育を実践する、
盈進中学校
上山朋子教諭
上山朋子教諭(以下、上山) 本校は1904年創立で、実社会で活躍できる人づくりを目指しています。「平和・ひと・環境」を大切にした学びの中で、軸となっているのが「言葉の力」です。現在は生徒数も増え、467名が学んでいます。学年ごとにテーマを設け、そのテーマに読書活動も連動させています。
博報堂教育財団(以下、財団) 読書科という教科を設けていらっしゃる点が印象的ですが、どのような背景があるのでしょうか。
上山 1992年に中学校を再開した際、「人づくり」を柱に、読書科・創作科・にんげん科の3教科を設けました。創作科は芸術や技術分野、にんげん科は道徳、そして読書科はその土台として「言葉の力」を育てる教科です。34年目になりますが、週1時間、学校として大切に積み重ねてきました。「言葉の力」がなければ、自分の考えを持つことも、人と関わることもできません。読書を通して、その基礎を育てていくことを大切にしています。
財団 具体的にはどのような学びを行っているのでしょうか。
上山 読書科のテーマは「本と出会い、ひとを知る」です。週1回の授業で年間10冊以上、3年間で30冊以上の読書を目標にしています。前半では、仲間と同じ本を読み、意見を交わしながら一体感を育み、他者の感じ方に触れることで自分の内面も深まっていきます。後半では、故郷である福山や広島を起点に、沖縄などから平和について学び、世界へと視野を広げていきます。地域と世界を結びつけてとらえながら、最終的には自分の興味・関心からテーマを設定し、4000字以上の修了論文としてまとめます。


つくる読書文化。
読書部の手作りパネルが図書館に彩りを添える。
入学時から本が好きな生徒ばかりではありませんが、読書科での経験を通して、そのイメージは大きく変わっていきます。周囲の友人や教員の姿に触れ、「読んでみたら難しくない」「話し合うのが楽しい」と感じるようになり、文章が認められることで意欲も高まっていきます。一方で、高校進学後は忙しさから読書から離れることもありますが、中学校の3年間で「読むことは楽しい」と感じられていれば、将来ふたたび本に戻るきっかけになります。そうした土台を育てることが、読書科の役割だと考えています。
財団 まさに「読み、書き、伝える」という営みを通して、自分の生き方を見つめていく学びですね。
上山 はい。その通りだと思います。また本校では、「キャリア読書」にも力を入れています。将来の生き方を見据えた視点から、関心のある分野や、将来自分が会いたいような人が書かれた作品に親しむことを意識しています。実際に、本との出会いから進路を見つけていった生徒もいます。中学2年生で隈研吾さんの本に出会って関心を深め、3年生の修了論文ではその建築をテーマに探究しました。完成した論文をご本人に送ったことをきっかけに実際にお会いする機会をいただき、その経験から建築への思いをさらに強め、現在は大学で建築を学んでいます。このように、読書を起点に興味が深まり、人との出会いを経て、自分の進む道へとつながっていく。そうした積み重ねが、生徒の未来を形づくっていくのだと感じています。
「届けたい一冊」が、言葉を育てる
財団 コンクールを知ったとき、どのような点に魅力を感じ、参加につながったのでしょうか。
上山 最初に知ったときに、「これはいい」と感じました。まず「人にすすめられる本」というコンセプトに強く惹かれましたし、とくに文字数が魅力的でした。本校では「E‐NOTE(イーノート)」という取り組みがあり、生徒は毎日200〜400字程度、自分の考えを書いているため、コンクールも自然と取り組めると感じました。

財団 日常的に言葉をつづっているのですね。
上山 そうなんです。担任や副担任がコメントを返しながら、生徒は何を感じ、どう考えたのかを言葉にしていきます。その積み重ねが「言葉の力」を育てています。
財団 「お気に入りの一冊ライブラリー※」も活用いただいていると伺いました。
上山 子どもたちには「自由に使っていい」とだけ伝え、あえて細かい型は示していません。型を示すと表現が似てしまうため、生徒自身が必要に応じて閲覧する形にしています。過去の生徒の作品も参考として一部見せることはありますが、見せすぎないように配慮し、「自分らしい表現」を大切にしています。一方で、人の文章に触れることは、自分の考えや表現を見つめ直す機会にもなります。他者の視点を通して刺激を受けたり、成長のきっかけにつながったりすることもあり、そうした学びも大切にしています。
財団 一冊の本との出会いを、学びや人とのつながりへと広げていくご実践に、読書の持つ力の大きさを改めて感じました。
※ お気に入りの一冊ライブラリー…過去の受賞作からおすすめの本を検索できる、博報堂教育財団運営のブックガイドサイト。


姫路市立豊富小中学校
(兵庫県)
「本を誰かに届ける」体験が、子どもたちを変えていく

(左から)中馬淳常務理事、畑田千香教諭
子どもたち自身がつくる、読書のきっかけ

畑田千香教諭
子どもたちが楽しみながら
主体的に読書と向き合う取り組みを推進。
畑田千香教諭(以下、畑田) 豊富小中学校は、小中一貫校として地域に根ざした教育を行っています。規模としては大きくはありませんが、その分、子どもたち一人ひとりの顔がよく見える環境です。「自分たちで考え、行動する」ということを大切にしており、日々の活動の中でも主体性を育てることを意識しています。
博報堂教育財団(以下、財団) 読書活動にも、その考え方が表れているのでしょうか。

中馬淳常務理事
畑田 そうですね。本校では、日常の中で活字に触れる機会を大切にしています。その一つが朝の時間を活用し、新聞に触れる「NIEタイム※1」です。読むだけでなく、ちぎり絵を作ったり、グループで「の」という文字を探してみたりと、多様な関わり方を通して親しんでいます。そうした時間の中で、活字に慣れると同時に、自然とコミュニケーションが生まれ、言葉を交わす経験へとつながっています。
また、司書の先生が長く在籍されていて、子ども一人ひとりに寄り添って本を手渡してくださいます。読み聞かせもとても大切な時間で、子どもたちは楽しみにしています。本を「読ませる」のではなく、本と「出会わせてくれる」存在ですね。
財団 本をテーマとした、子どもたち主体の取り組みもあると伺いました。
畑田 本校ならではの取り組みとして「本の福袋」を実施しています。これは当校の先生方が、一人一冊ずつ選びメッセージを添えて、福袋にしているもので、子どもたちが袋を選び、開けて初めて本と出会う仕組みです。中身が見えないことで興味が引き出され、40~50冊ほどですが、毎回取り合いになるほど人気の企画です。読んだ後に「楽しかったです」とお手紙をもらったり、「先生の字を久しぶりに見てうれしかった」といった声もあったり、子どもと先生をつなぐきっかけにもなっています。
さらに、子どもたちが自ら制作した作品を図書室の本として貸し出す取り組みも行っています。当校では、多くの子どもたちが学習から発展して、図鑑や物語、地域の祭り、自身の興味のあるテーマなど多岐にわたる本を制作しており、主体的な学びと創造性を育んでいます。そうした本についてもバーコードを付けて実際に借りられるようにすることで、「読まれる経験」が生まれ、また大きな刺激となっているようです。


「誰かに読んでほしい」という想いを形に。
子どもたちが制作した本を、図書室で貸し出し。

物語の世界を自分たちの手で
地図として表現。
これも「自らつくる」読書活動の
大切な一歩。
財団 素敵な取り組みですね。読書環境としての図書室の役割はいかがですか。
畑田 図書室は本を読むだけでなく、子どもたちにとって居心地の良い場所でもあります。高学年になると利用が減ることもありますが、それでも息抜きの場として足を運ぶ子もいます。写真集のように気軽に楽しめる本もあり、それぞれの関わり方ができる場所になっています。

思い思いに過ごせる居心地の良い場として存在する図書室。
「みんなで取り組める」コンクール。
読むこと、を広げる仕組み
財団 コンクールへは継続的にご参加いただいていますが、きっかけを教えてください。
畑田 子どもたちが誰でも取り組みやすい点が大きいです。文字数も適切で、「これなら書けそう」と思う子が多いと感じています。とくに「誰かにすすめる」というテーマは、子どもたちにとって自然に入りやすいものです。本校の子どもたちは素直で一生懸命ですが、自分の思いを言葉にすることに少し苦手意識があります。その点、「お気に入りの一冊をあなたへ」というネーミングは魅力的で、「誰かに届ける」という目的があることで、自然と書き出せるようになっています。また、学年にとらわれず本を選べる自由さも大きな魅力です。
財団 実際の子どもたちの反応はいかがでしたか。
畑田 「妹に読んであげたい」「友だちにすすめたい」といったように、相手を思い浮かべることで自然と書ける子が増えました。
財団 そこがこのコンクールの大きな特長のひとつです。「どの本を、誰に」と考えることで、書くべきことが明確になります。コンクールのホームページも活用していただいていると伺っています。
畑田 「お気に入りの一冊ライブラリー※2」を参考にしています。ほかの作品を見ることで、「こんな書き方もあるんだ」と、子どもたちが気づくきっかけになります。
財団 子どもたちが新しい本や表現に出会う場として、役立てていただければと思います。団体賞に贈られる10万円分の図書カードはどのように活用されましたか。
畑田 学級文庫の充実に使わせていただいています。子どもたち自身が読みたい本を選び、価格やISBNコード※3まで調べてリスト化し、購入したい本を投票で決めています。予算を超えないように話し合ったり、ジャンルの偏りを調整したりと、本を選ぶ過程そのものが学びになっています。また、新刊を手に入れる貴重な機会にもなっていて、子どもたちの読書意欲につながっているようです。今後も、こういった本に親しむ機会をつくっていきたいです。
財団 本コンクールを通じて、子どもたちの読書意欲がさらに高まっていくと、うれしいですね。
※1 NIE(Newspaper in Education=読み方「エヌ・アイ・イー」)タイムは学校の朝の時間などで、新聞を教材として活用する時間のこと。NIEは日本だけでなく世界80か国以上で実施されている。
※2 お気に入りの一冊ライブラリー…過去の受賞作からおすすめの本を検索できる、博報堂教育財団運営のブックガイドサイト。
※3 世界中で発行される書籍を1冊ずつ特定できる「国際標準図書番号」。






